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冬の花火
〜第一章〜
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友人1:「・・・でさ、なんだって。」

友人2:「えぇ〜それ、本当なの?」

友人3:「なんか、信じられなぁい。」

友人2:「ねぇ、冬子もそう思うでしょ?」

「へっ?」

友人2:「もう、聞いてなかったの?」

「あ、ごめん。」

茜色に染まった放課後の教室。
友人たちとの他愛のないお喋り。
楽しいはずの時間。

でも、私の心はそこにはなかった。

どうしようもないくらいくだらなく聞こえるお喋り。
それに興じる気になれなかった私は、窓の外で茜色に染まる町
をぼーっと眺めていた。

友人2:「調子悪いの?」

心配そうな顔で友人である明美が聞いてくる。

彼女の名前は、松平 明美(まつだいら あけみ)。

小学校時代からの付き合いで、何をするにしても一緒だった。
一番気心の知れた友人。

明美:「大丈夫?」

何も答えない私に再び明美が聞いてくる。

「大丈夫だよ。」

明美:「本当に?」

明美:「親友に隠し事は駄目だからね。
何かあるんだったら遠慮しないで言ってよね。」

「ありがとう・・・でも本当になんでもないから心配しないで
いいよ。」

「ただ・・・」

明美:「ただ・・・何?」

「お腹すいたなぁって、あははは・・・。」

明美:「なんだぁ、そうだったんだ。」

明美:「私たち育ち盛りだもんね。」

気遣う友人に適当な理由と笑顔を作って答える。

『親友』かぁ・・・。

友人達と別れ一人家路についた私は明美の言葉を思い出す。

今の私には『親友』という言葉が酷く陳腐なものに思えてしま
う。

はぁ・・・

以前は、こんなこと思わなかったのに。

ここ最近の自分の変化に戸惑いを覚える。

理由のない不快感や苛立ちが何時も心の何処かにあり、全てが
空々しく、無意味に感じる。

特に理由があるわけではないので対処のしようがない。

それにもまた苛つく。

黒い雪が深々と心に降り積もっていく。

黒の密度が日増しに大きくなるのを感じる。

私はどうしてしまったのだろう。

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12月16日 晴れ

今日は私の16度目の誕生日。
毎年家ではささやかなパーティーが開かれる。
小さい頃には楽しみだったパーティーも、この歳になると少々
鬱陶しい。

「思春期なのかな・・・」

そう呟いて少し自嘲気味に笑った。

昨日家に帰ってから今の自分の状態について考えた末に辿り着
いた結果が『思春期』だった。

大人たちや自分でさえも手を焼く不安定な年頃を指す言葉。
誰もが一度は通り過ぎるであろう人生の1ページ。
大人でも子供でもない時代。

期末テストも滞りなく終わり試験休みに入ったこの日、私は当
てもなく散歩をしていた。

休みだというのに早くに目が覚めてしまった私は、なんとなく
外の空気を吸ってみたくなり散歩に出かけることにしたのだ。

外へ出てみると昨夜のうちに降り積もったのか、町は一面雪に
覆われて真っ白な世界と化していた。

雪化粧とでもいうのだろうか?

まだ太陽も昇りきっておらず薄暗いというのにもかかわらず
目が痛くなるほどの白さだった。

私が住むココ柊坂という町では、冬には結構雪が降る。
でも、ここ数年は降っても積もることは少なかった。

地球の温暖化が原因かもしれない。

ここまで雪が積もるのは本当に久しぶりのことで、なんだか少
し嬉しくなる。

大抵の人は眠りの中か朝の慌ただしい時間の中なのだろう。
道には人はいなかった。

新雪の上を子気味のいい音を鳴らして静かに歩く。

さくっ、さくっ・・・

新雪の上を歩くのって、どうしてこんなに気持ちがいいのだろ
う。

でも・・・

もうすぐしたら喧騒に身を投じる人々の群れと泥とでこの純白
の世界は汚されるだろう。

それを思うと少し寂しい気持ちになった。

もっとも、真っ先に汚したのは私なんだけど。

空を見る。

久しぶりのいい天気だった。この時期になると空を覆う灰色の
雲も今日は見当たらない。
この分だとどっちみち昼には全ての雪は溶けてしまうだろう。

さくっ、さくっ・・・
さくっ、さくっ・・・

黙々と道を歩く。

いつも見慣れてるはずの町も、こう朝が早いとなんだか違う町
のように見える。

町一面に施された雪化粧も私にそう思わせることに一役買って
いるのかもしれない。

少し新鮮で、少し不安な気持ちになる。

さくっ、さくっ・・・
さくっ、さくっ・・・

どうして不安な気持ちになるのだろう?

たぶんそれは、知らない世界に独りでいるような・・・
そんな風な錯覚にとらわれてしまうからかもしれない。

フルフル・・・すぅーーーーーーはぁーーーーー。

軽く頭を振って、大きく深呼吸をする。

すると、不安な気持ちはどこかへいってしまった。

昔ながらの私のリラックス法である。

何時の頃からか誰に教えられたわけでもないのに私は緊張した
りするとこれをやるようになっていた。

「よし。」

小さくガッツポーズ。
そして、気持ちも新たに散歩を再開する。

さくっ、さくっ・・・
さくっ、さくっ・・・

しばらく歩いていると急に影がさした。

おかしい、さっきまで雲なんてなかったのに。
飛行機やヘリコプターにしても不自然な影だったし、音も聞こ
えなかった。

まさかUFO?

そんな馬鹿な。
そう思いつつ顔を空に向けた次の瞬間、私は絶句した。

だって見知らぬ男の子が空から舞い降りてきたのだから。

その姿は、まるで雪の精と思えるほどに白く儚げだった。

男の子:「うわぁっ!!あ、危ない!どいてぇ!!」

男の子のその叫びで現実に引き戻された私は、咄嗟に避けよう
としたけれど時既に遅し。

「きゃあぁっ!!」
男の子:「うわぁ!!」

ドスン!!

私と男の子は激しくぶつかり、雪の上に倒れた。

暗闇が押し寄せる。

急激に遠のいていく意識の中でちらりと見えた空には、やはり
雲はなかった。


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