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冬の花火
〜第六章〜
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いつもの清々しい青と眩しい白に包まれた朝がやってきた。
今日も私たちはいつものように並んで散歩へと出かける。
「ねぇ、冬弥。」
冬弥:「なぁに?」
「明日は散歩にこれないから。」
冬弥:「そっか・・・何か用事でもあるの?」
「明日学校の終業式なんだ。」
冬弥:「あ、そっかぁ・・・じゃあ仕方ないね。」
「冬弥のとこは終業式いつなの?
それとも、もう終わったの?」
冬弥:「僕、学校行ってないんだ。」
「学校行ってないって、冬弥っていくつなの?
絶対私と同じか、年下でしょ。」
「あっ、そっか。
家で専属の家庭教師かなんかがついてて、そこで勉強してるん
だ。やっぱり、金持ちのボンボンは違うわねぇ。」
私は勝手に想像を膨らませた。
冬弥:「まぁ・・・ちょっと違うけど似たようなもんかな。」
ふ〜ん、やっぱりボンボンは違うわね。
「そう言えばさ、冬弥っていくつなの?」
出会ってから1週間程過ぎるけど、お互い名前以外に年齢とか
住んでる場所とか全然知らないことに今更ながら気がついた。
「ちなみに私は、今月の16日に16歳になったところね。」
冬弥:「16日って・・・確か僕と冬子ちゃんが・・・」
「そう。冬弥と初めて会ったあの日が私の誕生日だったわけ。」
冬弥:「そっか、遅ればせながらおめでとう。」
「ありがとう。」
その言葉には、お祝いの言葉へのお礼の他に出会った日を覚え
ていてくれたことへのお礼が含まれていることは内緒にしてお
こう。
冬弥:「僕は、17歳。
もうすぐ、18歳になるけどね。」
「えぇぇぇぇぇっ!!
嘘ぉ!私より年上だったの冬弥って!!。」
冬弥:「ひどいなぁ、そんなに子供に見えるかなぁ。」
「見える。
容姿、言動、全てにおいて。」
私は、きっぱりと断言した。
だって、本当にそう見えるんだから仕方がない。
冬弥:「あははは・・・まぁ、よく言われるよ。」
冬弥は苦笑する。
「ねぇ、もうすぐ18歳って言ってたけど・・・誕生日って何
時なの・・・あ、じゃなくて何時なんですか?」
さすがに年上にタメ口もどうかと思い、慌てて訂正する。
冬弥:「あはは・・・いいよ今までどおりで。
急に改まれると寂しいものがあるしさ。」
それもそうね。
「うん。わかった。
で、誕生日って何時なの?」
私は今までどおりの言葉遣いで再度尋ねた。
冬弥:「12月24日。その日が僕の誕生日だよ。」
「へぇ〜イブに誕生日ってなんかお洒落な感じだね。」
冬弥:「そんなことないよ。」
「そっか、24日か・・・」
「って、明日じゃない!」
どうしよう、何もプレゼント用意してないよ。
ま、今誕生日を知ったんだからあたりまえなんだけど。
それでも、私は冬弥に何かしてあげたい。
そう思ったのだ。
「プレゼント、何がいい?」
冬弥:「えっ?」
「『えっ?』じゃなくて、プレゼント。
そりゃあ、たいしたものはあげられないけど。」
冬弥:「そんなぁ悪いよ。気を使わなくていいから。」
「別に気なんて使ってないわよ。
ただ・・・何かお祝いができたらなって思ったの。
迷惑なんだったらいいけどさ・・・。」
私をいつも暖かい気持ちにさせてくれる冬弥にささやかでも何
かお礼がしたいと、そう思った。
冬弥:「全然迷惑なんかじゃないよ。
凄く嬉しいよ冬子ちゃん。」
本日初の冬弥スマイル。
うぅ・・・いいなぁこの笑顔。
「じ、じゃあ、遠慮なく欲しいもの言ってみてよ。」
冬弥:「欲しいものって言うか、やりたいことがあるんだ。」
「やりたいこと?」
冬弥:「そう・・・花火がやりたい。」
「へっ!?花火?」
冬弥:「うん。TVとか遠めに見たことはあるんだけど、やった
ことないんだ。」
冬弥:「だから、一度でいいからやってみたくて。」
きっと、お坊ちゃんだから危ないとか、そんな理由でやらせて
もらえなかったんだろうなぁ。
「OK!わかった。
じゃあ、明日やろう花火!」
冬弥:「本当にいいの?」
「いいのいいの。この私に任せてよ。」
冬弥:「うわぁ、今から楽しみだなぁ。」
「じゃあ、明日の夜8時にいつもの場所で。
いける?門限とか大丈夫?」
冬弥:「・・・・・・・・・・・・うん。
大丈夫。絶対なんとかするよ。」
冬弥はしばらく考えてから、きっぱりとそう言った。
冬弥:「でも、冬子ちゃんは大丈夫なの?
そんな夜に出歩いて家の人に怒られない?」
「大丈夫、大丈夫。ノープロムレブ!」
「じゃ、明日。」
冬弥:「うん。」
;******
冬弥と別れたあと私は早速花火を探しに街へ出た。
正直この時期に売ってるかどうか不安だったけど、冬弥のため
になんとしてでも手に入れたい。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あれから、おもちゃ屋やパーティーグッズなんかを扱ってる店
を10件ほどまわったけど、花火を置いてある店はなかった。
12月も半分を過ぎた冬真っ盛りのこの時期に花火を扱う奇特
な店なんてあるはずがないとは思っていたけど・・・。
「はぁ〜・・・どうしよう。」
『任せて』なんて偉そうなこと言っておきながら結果がこれじ
ゃあ冬弥にあわす顔がない。
「はぁ〜・・・・・・。」
もう一度大きな溜息を吐く。
??:「どうした、どうした?
そんな大きな溜息なんか吐いちゃって。」
顔を上げると、そこには明美が立っていた。
「明美・・・」
「明美こそどうしたの、こんな所で。」
私は予期せず登場した明美に投げやり気味に問いかけた。
明美:「あー私はブラブラっとウインドウショッピング。」
明美:「それより、どうしたのよ冬子。何か悩み事?」
「はぁ〜・・・・・・。」
三度溜息を吐く。
明美:「うわっ!ひどっ!
人の顔見て溜息吐くか普通。
何々、言ってみなよ。この明美さんに。」
駄目元で言ってみるか・・・。
「花火。」
明美:「花火?」
「そう・・・花火がね欲しいんだけど、何処にも売ってないの
よね。
それで、どうしたものかと途方にくれてたってわけ。」
明美:「まぁ、冬真っ盛りだからね。」
「そうなのよねぇ・・・はぁ〜。」
明美:「『タルトの森』のケーキセット。」
「はい?」
明美:「あそこのタルトって美味しいよねぇ。」
「確かに私もあそこのタルト大好きだけど・・・」
それがいったいどうしたと言うのだろう。
今、花火の話をしてたのに全然関係ないじゃない。
私はなんだか少し腹が立ってきた。
こっちは真剣なのだ。
明美:「『タルトの森』のケーキセット奢ってくれたら花火が
100%手に入る店を教えてあげる。」
明美:「どう?」
えっ!?
花火が100%手に入る店?
この時期にそんな店が・・・
「あるの?」
明美:「あるよ。」
明美は悪戯っぽく笑う。
「『タルトの森』のケーキセットね。」
それで冬弥の笑顔が見られるなら安いものだ。
明美:「商談成立ね!」
私たちは固く握手を交わした。
;******
明美:「ん〜〜やっぱりここのタルトは最高ねぇ。」
「本当、美味しいよねぇ。」
私たちは花火を購入した後、タルトの専門であるここ『タルト
の森』でケーキセットに舌鼓を打っていた。
明美が言ったとおり、そこには花火が売ってあった。
『そこ』と言うのは、明美の近所にある駄菓子屋だった。
明美曰く『こういう店の方が意外と置いてるものなのよ。』
確かに盲点だった。
でも、これで念願の花火が手に入ったのだ。
こんな嬉しいことはない。
明美:「いい顔してるね。」
「えっ?」
明美:「本当に嬉しそうな顔。
そんなに花火が欲しかったんだ。」
「あ、うん。どうしてもね。」
明美:「好きな人でもできた?」
「えっ、な、何言い出すのよ急に。」
明美:「本当にいい顔するからさ。もしかしたらと思って。」
「そ、そんなこと・・・」
明美:「ぷっ、相変わらずすぐに顔に出るんだから。」
そ、そういうんじゃないよ冬弥は・・・たぶん・・・。
うぅ・・・嫌だなぁ自分でも顔が赤いのがわかる。
それから小一時間ほど明美との他愛のない会話を楽しんだ後、
店を出た。
「明美、本当にいいの?」
明美:「いいのいいの。」
約束通りケーキセットを奢ろうとした私に明美は『いいよ』と
言って自分の分を払った。
「でも、それじゃあ約束が・・・」
明美:「いいのよ、あんな約束。ただ冬子と久しぶりに話がし
たかっただけだから。」
明美:「ほら、冬休みに入る前の冬子って、どこかピリピリし
てたって言うか情緒不安定気味だったじゃない。」
気づいてたんだ・・・
明美:「まぁ、私たちは今不安定な時期だから仕方ないと思う
んだけど。
やっぱり心配じゃない親友としては。」
「ごめんね、心配かけて。」
明美:「いいの。
今日は久しぶりに本当の冬子に会えたから。」
本当の私・・・
明美:「凄く楽しかった。」
「わ、私も。」
明美:「それじゃあね冬子。また明日、学校でね。」
「うん。また、明日ね明美。」
明美は嬉しそうに帰っていった。
私は明美が見えなくなるまで手を振った。
『やっぱり心配じゃない親友としては。』・・・か。
その言葉は、あの時のように酷く陳腐なものではなかった。
今の私にとってそれは、とても暖かくて大切な言葉として心の
奥に染み込んでいった。
「ありがとう明美。」
もう見えなくなった親友を思って、そう呟いた。
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