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冬の花火
〜第七章〜
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教師:「以上でHRを終了する。解散。」

その言葉を合図に教室は一気に喧騒に包まれた。

皆それぞれ、渡された成績表のことや今日この後の予定につい
ての話で盛り上がっている。

終業式も滞りなく終わり、私たちは正式に冬休みへと突入する
こととなり開放感でいっぱいだった。

成績表に目を通すと、そこには相も変わらずの平々凡々な数字
が並んでいる。

良くもなく、悪くもない成績。

明美:「冬子。」

成績表と睨めっこしていた私に明美が声をかけてきた。
それが、私にすれば不意なものだったので少し驚いた。

「な、なあに明美。」

明美:「今日さ、あやの家でクリスマスパーティーやるんだけ
ど、どうする?」

明美:「・・・って言っても冬子は、今年は彼氏と過ごすんだ
ったっけ。」

「な・・・!」

何を言うのよ。
冬弥は、そんなんじゃないんだから・・・

そんなんじゃ・・・

「違うよ、そんなんじゃないんだから・・・」

「何時からなの?」

明美:「えっ!?」

「だから、クリスマスパーティー。」

明美:「来るの?」

「行っちゃ駄目なの?」

意地悪っぽく聞いていみる。

明美:「そ、そんなんじゃないけどさぁ・・・てっきり来ない
と思ってたからさ。」

「あっ、でも8時から予定が入ってるから、あんまり遅くは無
理だけど。」

明美:「なぁ〜んだ。やっぱり予定が入ってるんじゃない。」

明美:「しかも、夜から。
そうかぁ・・・。
冬子もとうとう少女から女へのステップを・・・。」

スパン!!

「するかぁ!」

明美:「いたたた・・・じょ、冗談よ冗談。」

やれやれ、明美にも困ったもんだ。

明美:「時間は5時から、場所は・・・」

「あやの家でしょ?」

明美:「そうそう、今年もあやのお手製ケーキが食べれると思
うと嬉しいんだけど、それって彼氏がいない証明でもあるから
複雑よねぇ。」

明美は、そう言って大袈裟に溜息をついた。

;******

パァン!!
パパァン!!!

全員:「メリクリィィィ〜♪」

明美:「はーい、飲み物は全員に渡ったかな?」

明美:「え〜それでは、女だけの寂しいクリスマスに乾杯!!」

全員:「かんぱ〜〜い!!」

;******

明美:「どう? やってる?」

そう言って明美は、お酒を煽る仕草をした。

「はいはい、やってますよ。」

アルコール0.1%未満のシャンメリーで。

「しかし、もうちょっとなんとかならないの?」

明美:「何が?」

「乾杯の音頭。」

明美:「何か問題だった?」

「寂しすぎるでしょ、あれじゃ。」

明美:「事実じゃない。
ま、もっとも冬子さんは違うみたいだけどねぇ♪」

もう、今日はこればっかり。

友人1:「えぇ〜!!あや二次会これないのぉ?」

あや:「う、うんちょっと予定があってね。」

明美:「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

明美:「ちょっとぉぉぉ!!あやぁぁぁぁ!!
どういうことよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

あや:「わゎっ!お、落ち着いてよ明美ちゃん。」

明美:「冬子のみならず、あやまでどういうことよぉ!」

あや:「こ、恐いよ明美ちゃん。
き、今日は、お兄ちゃんがね帰ってくるから・・・。」

明美:「お兄ちゃん?
ま、久しぶりに肉親が帰ってくるってのなら仕方ないわね。」

明美は、『なぁんだ』とあやに背中を向けた。
明美の眼は明らかに私を捉えていた。

次のターゲットはお前だと・・・

友人1:「えぇ〜でも、あやって確か一人っ子だよね。」

明美:「ど・う・い・う・こ・と・か・な?」

二流のホラー映画に出てくるゾンビのように首が180度回転
しそうな勢いで明美は再びあやに向き直った。

あや:「ひいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

友人2:「私、知ってるぅ。
あやには、『お兄ちゃん』て呼んでる男の人がいるんだ。
当然、血の繋がりはありませぇん!」

明美:「ほほう、それで?」

友人2:「確か2歳くらい私たちより年上で、あやが中三の頃
に他県に引っ越したって聞いたよ。」

明美:「どういう関係?吐きなさいあや!」

あや:「ど、どういう関係って・・・その・・・あの・・・」

友人2:「明美隊長!!」

明美:「うむ、なんだ。」

友人2:「私は何度かお兄ちゃんらしき人物とあやが仲良く腕
を組んだり手を繋いで歩いている現場を目撃しております!」

ひと時の静寂が場を支配した。

明美:「これよりぃぃっ!あやの尋問を開始するぅぅぅぅ!」

友人1:「はっ!」
友人2:「はっ!!」

あや:「わ、わゎっ!!た、助けて冬子ちゃぁ〜ん。」

許せあや。
そうなった明美は誰にも止められないの。

あや、あなたの尊い犠牲はけっして無駄にしない。

私は静かに合掌した。

女ばかりのクリスマスは、こんな調子で過ぎていった。

;******

「はぁ、はぁ、やっばーい。」

あやの家を出るときに思わぬ時間をくってしまい、既に約束の
時間を5分オーバーしていた。

この調子だと待ち合わせの場所に付いた頃には、20分の遅刻
は確実だった。

これと言うのも、誰が持ち込んだのか解らないが(多分、明美
だろうけど)持ち寄った飲み物の中にワインが入ってあり、明
美がそれを飲んで酔っ払ったためだ。

あやの家を出ようとした私にしがみついてきてなかなか放して
くれなかったのだ。

「く、これで冬弥に怒られたら明美を恨んでやる。」

もっとも、冬弥が怒るところなんて想像できないけど。

・・・−−ピーポーピーポー

ん!?

声:「救急車が直進します。進路をあけください。
救急車が直進します。進路をあけてください。」

ピーポーピーポーーー・・・

必死で走る私の前を一台の救急車が通り過ぎていった。

多分、柊坂総合病院へ向かっているのだろう。

行き先が同じなのだから乗せていって欲しい・・・
そんな不謹慎なことを思ってしまった。

ごめんなさい・・・

それにしても、何処かで事故でもあったのだろうか?

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「はぁ、はぁ、やっと着いた。」

時刻は、午後8時21分。

21分の遅刻。

「冬弥は・・・」

慌てて周りを見渡したけど、冬弥の姿はなかった。

「怒って帰っちゃったのかなぁ。」

どうしよう。

冬弥に嫌われたら・・・そう想うと胸が苦しくなる。

「冬弥ぁ・・・。」

落ち着け私。

まだ、怒って帰ったと決まったわけじゃない。

もしかしたら、家を出るのに手間取っているのかもしれない。

「うん。冬弥は、ボンボンだから可能性は充分ありえる。」

そう想うと少し、ほんの少し心が軽くなった。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

時計を見る。

時刻は、午後8時45分。

冬弥が現れる気配は一向になかった。

そこまで来ているかもしれないと、何度か見に行こうとも思っ
たけど、万が一すれ違ったらと思うといけなかった。

私は、じっと約束の場所で動かずに待っていた。

いつの間にか振り出した雪が辺りを少しずつではあるが確実に
白く染めていく。

時間だけが静かに流れていく。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「はぁ・・・9時20分。」

あれから1時間が経っていた。

冬弥は本当に怒って帰ってしまったのかもしれない。

冬弥は約束を重んじる性格だ。
短い付き合いではあるけれど、それは傍にいると感じ取ること
ができた。

毎朝の散歩。
待ち合わせの時間を遅れたことなど一度もなかったし、私との
些細な約束だって一度も破ったことがない。

神経質な性格だとかそういうことじゃなく、それは彼の優しさ
に起因していた。

人を傷つけることが嫌いだから。

だからこそ約束を重んじる。

本当に嫌われたかもしれない・・・

いや、冬弥を傷つけたかもしれない・・・

そう思った瞬間、つぅ〜〜と一筋の涙が私の頬を伝った。

いつから、私はこんなにも冬弥のことを想うようになっていた
のだろう。

冬弥のことを想うと涙が溢れて止まらなかった。

私の心の中は、いつのまにかこんなにも冬弥で溢れていた。

冬弥に感じていた安らいだ気持ち。

それは、恋だったのだ。

冬弥のいない空間を静かに雪が白く埋めていく。

「冬弥ぁ〜・・・」

その声は、白い世界に吸い込まれて消えていった・・・


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