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冬の花火
〜第八章〜
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・・・ピピッ、ピピピッ

「・・・38度1分。」

はぁ・・・・・・。

あの日は、結局10時過ぎまで待っていた。

でも、冬弥は来なかった。

雪が降る中で2時間ほどもいて体が冷え切ってしまったのだろ
う。私は風邪をひいて寝込んでしまった。

昨日の記憶といえば一日中熱で魘されていたことしかない。

そんな有様なものだから昨日は散歩には行けなかった。

冬弥は、待っていてくれていたのだろうか。
それだけが気がかりだった。

母親:「冬子、タクシー呼んだから病院行ってきなさい。」

様子を看にきた母親が言った。

「うぅ・・・動くの辛いよぅ。」

母親:「そんなこと言ってても治らないでしょう。
この冬の風邪は酷いみたいだから診てもらってきなさい。」

そんなことは毎年言ってるじゃない。

;******

はぁ〜・・・・・・

どうして大きな病院の待ち時間って異常に長いんだろう。

私は1時間ほど待たされて3分ほど診てもらい、更に会計のた
めに30分ほど待たされて疲れきっていた。

これだけ待たされて診察が3分って。

ちゃんと診てくれたのか不安になってしまう。

今は薬を処方してもらうために更に待たされている状態だ。
これじゃあ、治しに来てるのか悪化させに来てるのかわからな
い。

はぁ〜と軽く溜息を吐いて私は目を閉じた。
こうしてると少し楽になったような気がする。

しばらくこうしていよう・・・。

看護婦B:「そう言えば、冬弥くんはもう大丈夫なの?」

看護婦A:「おとついの晩は、少し危なかったんだけど昨日
から容態も落ち着いて、今朝病室に戻ったわ。」

『冬弥』?

・・・まさかね。

看護婦C:「あ、川澄さん。」

看護婦A:「どうしたの?」

看護婦C:「川澄さんを見かけたら病室に来て欲しいと伝えて
くれと頼まれまして。」

おーい、ここは病院だぞぉ。
看護婦がいつまでも立ち話してたら駄目じゃないかぁ。

看護婦B:「誰から?」

看護婦C:「あ、藤宮くんです。」

看護婦A:「冬弥くんが?なんだろう。」

『藤宮』? 『冬弥』?

私は目を開けて声が聞こえていた方角を確認する。
そこには、新人らしき看護婦一人と中堅ぽい看護婦二人の合計
3人の看護婦がいた。

『藤宮冬弥』という名前の人物がごろごろといるわけがない。

同姓同名の別人かもしれないけれど、私は確かめずにはいられ
なかった。

「あの・・・すいません。」

川澄:「あ、はい。なんですか?」

どこかで見かけた顔だった。

あぁ・・・そうだ。
冬弥と出会った日に見た口の悪い看護婦。

川澄:「あの・・・どうされました?」

おっと、それどころじゃない。

「今、話されていた『藤宮冬弥』くんについて少し聞きたいん
ですけど。」

川澄:「・・・・・・・・・・・・。」

川澄という名の看護婦は一瞬怪訝な表情を浮かべたが、すぐに
優しい笑顔に変わった。

川澄:「なんでしょう?」

優しい笑顔に事務的な口調。
私への警戒心が解かれていないのがそれでわかった。

それでも私は構わず続けた。

「さっき話してた冬弥くんて、柔らかそうな栗色の髪に雪のよ
うに白い肌してて、年齢は、私と同じくらいに見えて・・・。
えっと、それと・・・」

「そう、誕生日が12月24日の藤宮 冬弥くんですか?」

私は冬弥に関して知りえる特徴、情報の全てを話した?

川澄:「あなた・・・もしかして冬子ちゃん?」

「はい、藤宮 冬子です。」

川澄:「そう・・・あなたが。」

なにやら看護婦さんは私のことを知っているみたいだった。

「じゃあ、やっぱり冬弥がこの病院にいるんですね。」

まさか、あの日事故にでも遭ってここへ運ばれたんじゃ・・・

あの時通り過ぎた救急車がそうだったんじゃ・・・

色々なことが頭の中を駆け巡る。

「あの、できれば冬弥に会いたいんですけど。」

さっきの看護婦さんたちの話からして集中治療室に入るような
重症ではないようだし、面会くらいOKだろう。

川澄:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

川澄:「・・・・・・・・・・・わかったわ。」

看護婦B:「ちょっと川澄、勝手なことしたら・・・」

川澄:「責任は私がとるから。」

看護婦C:「・・・・・・・・・・・・。」

たかが面会くらいで大袈裟だなと思った。

それから私は、川澄さんに案内されて冬弥の病室へ向かった。

川澄:「話はいつも冬弥くんから聞いてるわ。」

いつも?

どういうことだろう。

知り合いなのかな?

渡り廊下を過ぎてしばらく歩くと白い扉が現れた。

川澄:「こっちよ。」

そう言って扉を開ける。

その扉には『ここより先、特別病棟につき許可無しに立ち入る
ことを禁ず』と重々しく書かれていた。

なんで冬弥がこんなところに・・・

私は、こみ上げてくる胸騒ぎを抑えられなかった。

言いようのない不安が胸を締め付ける。

この特別病棟に入るまでは、この病院にいる人物が冬弥本人で
あること強く願っていた。

でも、今私の心境はまったくの逆だった。

どうか同姓同名の人違いでありますようにと強く強く願ってい
る。

コンコン・・・

川澄さんが、ある病室のドアを軽くノックした。

その病室の前には『藤宮 冬弥』とはっきりと書かれている。

しばらくして病室の中から『どうぞ』と声が聞こえてきた。

川澄さんの手によって静かにドアが開かれていく。

真っ白な病室が眼前に現れる。

病室の主はやわらかい微笑を湛えている。

それは私のよく知っている笑顔で・・・

「待ってたよ川澄さん。忙しいのにごめんね。」

やわらかい微笑みを浮かべ静かに言葉を紡いでいく。

そこには私の知る藤宮 冬弥がいた。

ドクン・・・ドクン・・・

鼓動が大きくなる。

はぁ・・・はぁ・・・

なんだか息も苦しくなってきた。

熱が上がってきたのだろうか。

川澄さんが何か言っている・・・。

冬弥が驚いている・・・。

なんでだろう・・・妙に静かだ。

自分の鼓動だけがやけに大きく聞こえる。

暗闇が押し寄せて私を飲み込んだ。

どさっ・・・

川澄:「ふ、藤宮さん、しっかり。藤宮さん!」

冬弥:「冬子ちゃん!冬子ちゃん!!」

遠くで冬弥の呼ぶ声が聞こえた気がした


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