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潰
〜Tui〜
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ある春の日、僕は綺麗な小鳥を捕まえた。
その綺麗な小鳥は僕に言う。
「私はけして逃げません。だから羽ばたく自由を奪わな
いでください。」
たしかに僕は飛んでいる小鳥の姿も好きだったので承諾
した。
小鳥は約束どおりけして逃げることはなかった。
だけど、僕は常に不安だった。
いつか逃げてしまうんじゃないかって。
だから僕は鳥篭に入れてしまった。
小鳥は言う。
「私はあなたとの約束をけして破りません。
だから・・・だから・・・信じてください・・・」
それでも僕は鳥篭から小鳥を出さなかった。
二日経ち三日経ち・・・数日が過ぎていった。
僕は鳥篭に入った小鳥を見て安心する。
安心した僕は眠りこんでしまった。
目を覚ますと小鳥はぐったりと冷たくなっていた。
二度と小鳥が目を覚ますことはなかった。
そうして僕は気付く。
小鳥を篭に入れてから餌を一切与えていなかったことに。
僕は自分のどうしようもない愚かさに涙を流した。
ひとしきり泣いた後、弔うために鳥篭から小鳥を取り出そ
うと篭を開けた瞬間、小鳥は光の粒に変わりキラキラと空
へと昇り、消えた。
僕はそれを見て、また涙を流した。
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確かに想いはココにあった。
それは、けして潰えることのない想い。
永遠の想い。
あったんだ。
それは確かにココに。
ーあった・・・ー
矛盾している。
『永遠』は過形去になりえないからこそ『永遠』なんだ。
『永遠』・・・それは、終わりがないこと。
未来永劫続いていくこと。
だとしたら、確かにあったあの想いは『永遠の想い』は永遠で
はなかったということなのだろうか。
ーそんなに自分が可愛い?ー
別れ際の彼女の言葉を思いだす。
僕は誰かに好きになってもらったり、愛されるに値しない人間
である。
別に自分を卑下しいるつもりはない。
それが自分自身に対する冷静な見解だった。
そんな僕にも友人はいる。
学生のころからの友人である。
こんな僕によくもまぁ何年も付き合ってられるものだと関心す
ると同時に感謝もする。
自分ですら自身を持て余すのだ。
周りの人間など堪ったものではないと思う。
不安定に周りを傷つけ、頑なに自分を護ろうとする。
やっかいだ・・・と思う。
そんな僕だから彼女は眩しすぎた。
可愛くて、優しくて、社交的な彼女が。
僕とは正反対な彼女。
傍らにいてくれる彼女のぬくもりを感じて安心する。
放したくないと切に想う。
彼女と肌を月日を重ねていく度にその気持ちは強くなっていっ
た。
社交的な彼女には友人も多い。
その中には異性の友人もたくさんいた。
彼女が出かける度に胸が不安で締め付けられた。
僕から離れていくんじゃないかと。
見知らぬ誰かとの情事を夢想しては不安で胸を締め付ける。
彼女が戻らない夜は特に。
僕の両親は、僕が小学生のころに離婚している。
家庭が壊れる様が目と心にアリアリと焼き付けられた。
離婚間際になると、母親が夜家に帰ってこなくなることが多く
なった。
夜目が覚め、母親を探す。
母親がいないことが解ると急に不安がこみ上げてくる。
不安の中でもう一度眠りにつく。
朝、目が覚め家に母がいないことを知っていたたまれない気持
ちになる。
それの繰り返しだった。
そして、とうとう両親は離婚した。
僕は父親に引き取られた。
彼女のいない夜、あの頃の不安が心を支配する。
不安で不安でたまらなくなり泣きたくなる。
以前、それを彼女に話した時、彼女は優しく僕を抱きしめて言
ってくれた。
『私は大丈夫だよ。』と。
彼女のぬくもりを感じてすごく安心したことを覚えている。
彼女は母親とは違う。
それは頭では理解していた。
だけど・・・
彼女の囁きもぬくもりも傍らにいてくれる事実さえも彼女のい
ない時の不安に勝ることはなかった。
傷つくのが怖かった僕は彼女のことを信じてあげることができ
なかった。
信じてさえいれば傷つくこともなかったかもしれないのに。
彼女を信じることができない。
でも、それでも心は彼女を求めることをやめない。
僕にとって『愛する』ことと『信じる』ことは全く別だった。
信じられるから愛せるわけはなく、また愛しているからと言っ
て信じられるというものでもない。
寧ろ愛していればいるほど信じられなくなる。
失うことの恐怖に心が支配される。
『愛』というものの定義がどうなのかは知らないし、それは人
それぞれだろうと思う。
『愛とは与えるものだ』と言う者もいるだろうし、『相手を慈
しむ心』だと言う者もいるだろう。
だけど僕にとって『愛』とは『求める』ことだった。
小さな子供が母親の愛情を求めるように、僕は彼女の愛を求め
たのだ。
ただ求めた・・・
本当に求めるだけだった。
僕は彼女に何一つ与えることなく求め続けた。
そして彼女は疲れ、彼女の愛は潰えた。
信じてもらえないことに彼女は傷つき・・・
信じてあげられないことに僕は苦しんだ・・・
自分勝手な言い草だけど、それもまた事実だった。
別れる時、涙が溢れた。
そして、これからも永遠に変わることのない彼女への想いを胸
に生きていくんだと・・・そう思った。
ーそんなに自分が可愛い?ー
彼女の言葉を思い出す。
あれから2年の月日が経っていた。
彼女のことを想わない日はなく、夢に彼女が現れるたびに胸が
締め付けられた。
その度にもうけして色褪せることのない想いなんだということ
を思い知らされた。
苦しかった。
でも、どこかほっとしていたのも事実だった。
その苦しみは僕が未だ彼女のことを好きだという事実であり、
この想いが『永遠』だということの証だったから。
頑なに行くことを拒んでいた彼女との思い出の場所。
僕は今そこに立っている。
ケジメが必要だと思ったから。
彼女との思い出の場所を嫌な場所に変えたくなかったから。
この場所に来て思うところはあった。
ココには彼女との思い出がたくさんあるから。
ただ思っていたよりも辛くなかった。
その時、僕の心の中の彼女への想いがあの時程の強さを持って
いないことに気がついた。
少し悲しかった。
この想いは永遠だと思っていたから。
色褪せることのない想いだと信じていたから。
潰えるはずのない僕の『愛』だったから。
彼女と見た景色を見る。
不思議だった。
彼女と別れてからの2年の苦しみが嘘のように感じられるほど
心は静かだった。
僕は静かに目を瞑る。
そして、彼女への想いが潰えていたこと知った。
目をゆっくりと開け空を見上げる。
青く澄んだ空に日の光がキラキラと眩しい。
それを見て僕は涙を流した。
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